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研究内容

新規な量子化学手法の開発

分子や固体が持つ物性や光学的性質の多くは、物質内の電子の状態によって発現します。電子の運動を支配するシュレディンガー方程式を完全に解くことはスーパーコンピュータを使っても不可能であり、現在の量子化学計算は近似的な取り扱いにとどまっているものの、実験結果の定性的解釈や未知の化合物に対する理論的予測においてこれまで大きな役割を果たしてきました。しかしながら、ラジカル有機分子や遷移金属錯体など、電子がミクロな粒子であることに起因する量子力学的な性質が特に強まるとき、これまで用いられてきた一般的な理論計算手法のほとんどは破綻をきたすことが知られています。本研究室では、こうした電子の「量子もつれ」が強く起きる化合物に対して有効な新規理論を築き、それらをプログラムとして開発することによって既存の手法では到達できない化学領域の開拓を目指しています。

触媒化学のシミュレーション

太陽光による水の完全分解 \({\rm H}_2{\rm O} \rightarrow {\rm H}_2 + \frac{1}{2} {\rm O}_2\)とは、クリーンな新エネルギー技術として期待されています。光エネルギーを水素分子の化学結合エネルギーへ高効率に変換できれば計り知れない産業的価値がありますが、酸素発生反応は4電子が段階的に関わる酸化反応であり、これを可視光によって達成するために新たな触媒設計が求められています。そこで、第一原理計算を用いた電子シミュレーションによって触媒機構の理解やその結果をもとに触媒活性改善に向けた理論的提案を行っています。

量子コンピュータへの展開

スーパーコンピュータの発展により量子化学計算分野は大きな成功を収めてきましたが、量子力学によって支配された化学を正しくシミュレーションしたければ、量子力学の原理によって作動するコンピュータを作るのが理想です。1982年にリチャードファインマンによって提唱されたこの思想は、今日に至るまで着々と進展し、量子コンピュータとして実現しています。しかし現在の量子コンピュータはノイズによる影響が無視できないなど様々な制限があり、まだまだ発展途上の研究分野です。本研究室では、今後量子化学のパラダイムを転換することが期待される量子コンピュータを有効活用するために必要な「量子アルゴリズム」の開発を中長期的な視点で行っています。

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